緑内障の原因と言われる眼圧上昇、その他要因
緑内障(りょくないしょう)は、視神経が損傷することで視力低下や視野欠損を
引き起こす疾患で、進行すると失明に至ることもあります。
世界的に失明の主要な原因の一つとされており、日本でも高齢化に伴って
緑内障患者の増加が懸念されています。
緑内障の原因は多岐にわたりますが、最もよく知られている要因は眼圧の上昇です。
ここでは、眼圧を含むさまざまな要因や、緑内障の発症に関与する
他の要因について詳しく説明します。
眼圧の上昇
緑内障の主要な原因とされているのが、眼圧の上昇です。
眼圧は、眼球内を循環する「房水(ぼうすい)」という液体の圧力によって生じます。
房水は眼球の中で栄養を供給し、老廃物を排出する役割を担っていますが、
房水の産生と排出のバランスが崩れることで眼圧が上昇します。
眼圧が上昇すると、視神経が圧迫され、血流が減少し、最終的には視神経細胞が死滅します。
緑内障には「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」の2種類があります。
開放隅角緑内障は、房水の排出経路が徐々に詰まることで眼圧が上昇するのに対し、
閉塞隅角緑内障は急激に房水の排出経路が閉じ、急速な眼圧上昇が引き起こされるタイプです。
特に後者は、激しい目の痛みや視力障害を伴う緊急性の高い状態です。
しかし、すべての緑内障が眼圧の上昇によって引き起こされるわけではありません。
「正常眼圧緑内障」というタイプでは、眼圧が正常範囲内であっても視神経が損傷します。
これは日本人を含むアジア系の人々に多く見られるタイプで、発症の原因は眼圧以外の
要因に起因すると考えられています。
視神経の血流不足
視神経への血流が不十分な状態も、緑内障の重要な原因とされています。
視神経には酸素や栄養を運ぶために、血液供給が不可欠です。
血流が不十分になると、視神経細胞が十分な酸素や栄養を得られず、
結果として視神経が損傷します。
これは特に正常眼圧緑内障の発症に深く関与しているとされます。
視神経の血流が悪くなる原因としては、全身性の血管疾患や動脈硬化が挙げられます。
また、低血圧や睡眠時無呼吸症候群なども血流不足の一因と考えられています。
遺伝的要因
緑内障には遺伝的要因も関与していることが知られています。
特に家族に緑内障患者がいる場合、緑内障の発症リスクが高まることが示されています。
いくつかの遺伝子が緑内障のリスクに関与していることが明らかになっていますが、
遺伝子がどのように緑内障に影響を与えるのかについては、まだ完全には解明されていません。
ただし、遺伝子の異常が視神経の脆弱性を高め、
眼圧の上昇や血流不足によるダメージを受けやすくなると考えられています。
年齢
年齢もまた、緑内障の重要なリスク要因の一つです。
特に40歳以上の人々では、緑内障の発症リスクが増加します。
年齢とともに眼内の組織や血管が劣化し、眼圧の調整がうまくいかなくなることや、
視神経が加齢により脆弱になることが原因とされています。
これにより、眼圧がわずかに上昇しただけでも、視神経へのダメージが
生じやすくなると考えられます。
生活習慣と環境要因
生活習慣や環境要因も緑内障の発症リスクに影響を与える可能性があります。
例えば、喫煙や過剰な飲酒は全身の血管にダメージを与え、視神経への血流を妨げる
原因となることが知られています。
また、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用など、
目を酷使する生活習慣が視神経にストレスをかけ、緑内障のリスクを
高める可能性が指摘されています。
糖尿病と高血圧
全身性の疾患、特に糖尿病や高血圧は、緑内障の発症リスクを
高める要因として知られています。
糖尿病患者では、血糖値のコントロールが不十分な場合、血管が損傷しやすく、
これが視神経の血流にも悪影響を及ぼします。
また、高血圧が続くと、視神経周辺の微小血管に負担がかかり、
視神経の損傷リスクが高まります。
これらの疾患を持つ人々は、定期的に眼科検診を受けることが推奨されます。
結論
緑内障の発症にはさまざまな要因が関与しており、特に眼圧の上昇が重要なリスク要因と
なっていますが、正常眼圧緑内障のように、眼圧が正常でも発症するケースもあります。
遺伝や年齢、視神経への血流不足、全身性の疾患や生活習慣など、
複数の要因が相互に影響し合い、緑内障の進行を加速させる可能性があります。
そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。